日本の農産物はなぜ注目されるのか?海外需要と輸出の現状について解説

近年、日本の農産物を海外へと送り出す「農産物輸出」が大きな注目を集めています。

人口が減少し、国内の食市場が縮小するなかで、新しい販路を求める農家や企業が増えているからです。

また、海外では日本の食文化が広がり、和食ブームや健康志向の高まりとあわせて、日本産の野菜や果物に対する関心も高まっています。
環境にやさしい農産物を選ぶ動きは世界的に進んでおり、持続可能な農業の取り組みがこれまで以上に重要になっています。

目次

日本の農産物が海外で人気になっている理由

安全・高品質なイメージが強みの日本食が海外でブーム

日本の農産物や食品が海外で注目を集める背景にはいくつかの理由があります。

まず、世界的な日本食ブームです。

海外に日本食レストランが増え日本食への関心が高まったことで、日本産の食材や農産物の需要が拡大しています。

また、アジアを中心に新興国で所得水準が上がり、中間層・富裕層が増えた結果、「安全で高品質な日本の農産物を食べたい」という購買層が増加しました。

このように海外需要が高まったことに加え、日本国内では人口減少により農産物を買う人が年々減り続けていることから、農産物輸出が農業の成長戦略として注目されている のです。

小泉政権時代に進んだ「稼げる農業」への転換

2000 年代初頭の小泉政権では、「構造改革」の一環として農業政策にも大きな変化がありました。

それまでの日本の農業は「守る」政策が中心でしたが、この時期から「稼ぐ農業」への転換が進められました。農産物のブランド化や輸出支援、民間企業との連携が促進され、農家がより高い所得を得られる仕組みづくりが始まったのです。

特に、地域ブランドの認証制度や六次産業化(生産・加工・販売の一体化)の推進によって、農家自身が付加価値をつけた商品を販売できるようになりました。こうした取り組みが農家の所得向上につながり、輸出を視野に入れた経営への意識変化を生み出しました。

現在の「農産物輸出を成長戦略に」という流れも、この時代の改革が下地となっています。

円安の影響で競争力が高い

円の価値が下がると日本の農産物は国際市場で割安になり、海外で価格競争力が高まります。

一方で、海外の富裕層市場や「日本ブランド」に価値を感じる消費者は多く、円安で相対的に安くなった分、販売者は“国内よりも高い価格”で売る余地が生まれます。
日本国内では値上げしにくい農産物でも海外では適正な高い価格で販売しやすくなるというメリットになります。

政府も農産物輸出の拡大に力を入れており、2025 年までに輸出額2 兆円、2030 年までに5 兆円という目標を掲げて各種支援策を講じています。

日本の農産物輸出の現状と最近の動き

日本の農林水産物・食品の輸出額は年々増加しており、2023 年には過去最高の約1 兆4,547 億円に達しました。

これは前年比 2.9%増で、10 年ほどで輸出額が 2 倍以上に伸びた計算です。

背景には前述の海外需要の高まりに加え、コロナ禍明けで世界各国の外食需要が回復し、日本産の農産物・食品の輸出を後押ししたことがあります。

特に牛肉は香港や台湾での和牛人気により輸出額が伸び、輸出品目別で上位に入りました。

最近の動向として、輸出の主力品目にも変化が見られます。

2023 年の品目別輸出額トップはアルコール飲料(日本酒・ウイスキー等)、次いでホタテ貝、牛肉と続きました。

また緑茶(抹茶)は欧米やアジアでの健康志向ブームを背景に需要が増え、輸出額が大きく伸びています。

主要な輸出先は中国が最大ですが、香港、米国、台湾、韓国などがこれに続き、日本産品への需要が広範な地域で高まっていることがわかります。

政府は輸出拡大の目標達成に向け、輸出先国との交渉や規制緩和にも取り組んでいます。

このように、農産物輸出は順調に拡大を続けており、「日本ブランド」の農産物が海外市場で存在感を高めています。

環境に優しい農産物が海外で評価される理由

消費者の環境意識が高まり、選ばれる農産物も変化

海外の市場では近年、「環境に配慮した食品」や「持続可能な生産」が重要なキーワードとなっています。なぜ環境に優しい農産物が評価されるのでしょうか。

その大きな理由の一つは、世界的に気候変動や環境破壊への危機感が高まり、企業も消費者もサステナビリティ(持続可能性)を重視するようになったことです。

農業分野も例外ではなく、環境負荷の少ない農産物は「地球に優しい選択肢」として歓迎される傾向があります。

特に欧米を中心にエコ意識の高い消費者が増えており、そうした人々は生産背景まで考慮して食品を選ぶようになっています。

先進国を中心に農産物は、美味しいだけではもはや価値として認められず、その美味しさの要因となった生産者や生育環境等の背景や歴史に大きな価値が付与される時代へと変化しています。
気候変動や環境に配慮した農産物を選択することは、飢餓に苦しむ多くの人を救う行動にもなる事にもつながります。

企業も環境対応を求める時代に

海外の大手食品会社や流通業者は、いま「自分たちが取り扱う商品がどれだけ温室効果ガス(GHG)を排出しているか」を強く意識しています。

そのため、農場での生産から運送、加工、販売にいたるまでのGHGの排出を減らすという目標を掲げる企業が増えています。

つまり、農産物の生産現場もサプライチェーンの一部として見られており、「環境への 負担が少ない農産物を仕入れたい」という要望が強まっているのです。

国際サステナビリティ基準審議会(ISSB)の設立を受け、企業は自社のみではなく、サプライチェーン全体でのGHG排出量の開示が求められるようになり、日本でも2027年からプライム企業から開示することが義務づけられます。

企業は多かれ少なかれ農産物を直接・間接的に使用しますので、農業生産でのGHG開示は避けては通れない義務となる事が予想されます。

欧州連合(EU)では農産物の環境フットプリント、つまり「どれだけ環境に負荷を与え て作られたか」を数値で示す仕組みの導入が進んでおり、200を超える認証制度が存在します。

日本の農産物も近い将来、その情報を輸出時に開示することが求められる可能性が高いのです。

このように、企業の自主的な取り組みだけでなく、国や地域のルールそのものも変わりつつあります。

規制が進めば進むほど、環境に配慮した農産物の価値はさらに高まり、輸出市場での強 力なアピールポイントになります。

一方でGHG排出量にこだわりすぎることで、農産物=食=命の源の根本が失われてしまう危険性もあります。
環境負荷ばかりを追い求め、世界中全ての人々に食料が行き渡らなければ本末転倒です。

日本の農業は戦後、一貫して飢餓へ貢献してきました。環境貢献農産物世界的な流れを意識しつつ、日本らしい取り組みで世界の農業に貢献できる技術と品質を作り出すことが今後の輸出拡大につながっていくのです。

これからの農業経営に欠かせない「環境価値」という視点

私たち一般社団法人脱炭素農産物推進協議会は、生産者様の「見えない努力」を数値化・可視化し、確かなブランディングにつなげる支援を行っています。

「脱炭素」と「持続可能性」「価値」に変えることで、販路の拡大や、選ばれる農産物づくり、ひいては「稼げる農業」の実現を後押しします。

 私たちの具体的な活動内容や、会員様への支援体制について、ぜひ一度公式サイトをご覧ください。

まとめ

日本の農産物は、味の良さや品質の高さで海外市場から強い支持を受けています。 さらに、円安や政府の輸出支援策が後押しとなり、輸出額は年々拡大を続けています。

その一方で、世界では気候変動や環境問題への関心が高まり、農産物にも「環境にやさ しいかどうか」が問われる時代になりました。

これからは「おいしい」「安心・安全」だけでなく、「地球に配慮して作られている」 という価値も輸出の大きな武器となります。

日本の農業が環境への取り組みを強めていけば、世界に誇れる「持続可能な日本ブラン ド」としてさらに成長できるでしょう。

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この記事を書いた人

当協議会は、農業分野における脱炭素化の推進と、持続可能な地域農業の実現を目的として設立されました。再生可能エネルギーの活用、温室効果ガス排出量の可視化、低炭素農法の普及支援、カーボンクレジットの利活用、農産物の環境価値の認証制度など、多角的なアプローチで「次世代の農業モデル」を構築しています。

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